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妊娠中に「楽しみとして準備していいこと・しなくていいこと」の線引き

2025 12/30
ブログ
2025年12月31日

妊娠期間は、新しい命の誕生を心待ちにする、喜びに満ちた特別な時間です。ベビー服を選んだり、お部屋の準備をしたりと、本来はワクワクするはずの準備。しかし、気づけば「まだ足りない気がする」「何か忘れている気がする」「ちゃんと準備できていない気がする」といった、焦りや不安に駆られてしまうことはありませんか?

その原因の多くは、本来楽しみであるはずの「準備」が、いつの間にか「やらなければならないこと」という義務に変わってしまっていることにあります。情報が溢れる現代では、他の妊婦さんのSNS投稿や雑誌の特集を見て、「自分も同じようにしなければ」と感じてしまうことも少なくありません。

しかし、本当に大切なのは、完璧なリストをこなすことではなく、あなた自身の心が満たされる準備をすることです。実は、妊娠中の準備には「楽しみとしてやっていい準備」と「無理にやらなくていい準備」がはっきりと分かれています。この線引きを理解することで、準備に追われるストレスから解放され、心穏やかで豊かなマタニティライフを送ることができます。

この記事では、その具体的な線引きについて、詳しく解説していきます。

目次

妊娠中の準備は「不安からの準備」と「楽しみからの準備」に分かれる

妊娠中の準備は、その動機によって大きく二つの種類に分類できます。一つは「不安」を原動力とする準備、もう一つは「楽しみ」を原動力とする準備です。この二つを混同してしまうことが、準備を辛いものに変えてしまう最大の原因なのです。

不安からの準備は、終わりがない

「これも必要かもしれない」「足りなかったらどうしよう」「みんなはもっと準備しているのに」…こうした思考から始まる準備は、まるで終わりのない迷路に迷い込んだようなものです。

例えば、SNSで見た「絶対に買うべき育児グッズ10選」というリスト。それを参考に買い物を始めたものの、別の記事では「実は不要だった育児グッズ」として同じものが挙げられていたりします。情報を集めれば集めるほど、「どちらが正しいのだろう?」と混乱し、さらに別の情報を探し始める…という悪循環に陥ります。

このタイプの準備は、やればやるほど「まだ足りない」という感覚が増幅されやすいのが特徴です。他者との比較が基準になっているため、どれだけ物を揃えても、「もっと良いものがあるかもしれない」「あの人が持っているものの方が優れているかもしれない」という疑念が次々と湧き上がってきます。これは、心の穴を物で埋めようとする行為に似ており、根本的な安心感には繋がりません。

楽しみからの準備は、心を満たす

一方で、「これを選ぶ時間が楽しい」「赤ちゃんがこれを着る姿を思い浮かべるとワクワクする」「生まれたらこんなことをしてあげたいな」といった、ポジティブな感情から始まる準備もあります。

これは、誰かの基準に合わせるのではなく、あなた自身の心が「喜び」を感じるかどうかが基準です。例えば、たくさんのベビー服を揃えるのではなく、たった一着でも「退院の日にこの服を着せてあげたい」と心から思える特別な服を選ぶ時間。それは、単なる買い物ではなく、未来の赤ちゃんとの対話であり、母親になる喜びを実感する貴重なひとときです。

こうした準備は、物を得ること自体が目的ではありません。そのプロセスを通して、赤ちゃんへの愛情を育み、家族としての未来を想像することで、妊娠期間そのものを豊かにしてくれます。心が満たされる感覚は、これから始まる育児への自信とエネルギーにも繋がっていくのです。

楽しみとして「準備していいこと」

それでは、具体的にどのような準備が「楽しみ」として推奨されるのでしょうか。ここでは、心を豊かにするための3つの準備をご紹介します。大切なのは、完璧を目指すのではなく、そのプロセス自体を楽しむことです。

① 赤ちゃんとの思い出を想像すること

物理的な準備だけでなく、未来を思い描く「心の準備」は、何よりも価値のある時間です。何かを決めたり、購入したりする必要は一切ありません。ただ、赤ちゃんと過ごす未来を想像するだけで、それは立派な準備なのです。

  • ニューボーンフォトを撮るか考える: 生後間もない、貴重な姿を写真に残すニューボーンフォト。どんな雰囲気で撮りたいか、どんな衣装がいいか、家族みんなで写るならどんなポーズがいいか。インターネットで素敵な写真を探しながら想像を膨らませる時間は、幸せな気持ちにさせてくれます。実際に予約するかどうかは、後でゆっくり考えれば良いのです。
  • 最初の家族写真を思い描く: 赤ちゃんが生まれて初めて撮る家族写真。退院の日、お宮参りの日、あるいは何気ない日常の一コマかもしれません。どこで、誰と、どんな表情で写りたいか。その写真を見るたびに、きっと温かい気持ちになれるでしょう。
  • どんな時間を過ごしたいか考える: 晴れた日には公園でピクニックをしたい。雨の日には絵本をたくさん読んであげたい。週末には少し遠出をして、自然に触れさせてあげたい。具体的な計画を立てる必要はありません。ただ「こんなことをしてみたいな」とパートナーと語り合うだけで、未来への期待が膨らみ、二人の絆も深まります。

② 自分の気持ちが上がる「1つ」を選ぶこと

「あれもこれも」と数を揃える必要はありません。大切なのは量ではなく、あなたの心が本当に「嬉しい」「幸せ」と感じるかどうかです。たくさんの物の中から、「これがあれば大丈夫」と思える特別な「1つ」を見つけてみましょう。

  • 退院の日に着せたい服: 長い入院生活を終え、初めて赤ちゃんと一緒に家に帰る日。その特別な日に着せてあげたい、とっておきのセレモニードレスやベビーウェアを1着だけ選んでみましょう。その服を見るたびに、出産の感動と、これからの生活への希望が蘇るはずです。
  • 写真に残したい1着: ニューボーンフォトやお宮参りなど、記念撮影の主役になるような一着。デザイン、素材、色合いなど、あなたのこだわりを詰め込んだ特別な服を選びましょう。それは、赤ちゃんへの最初のプレゼントであり、家族の思い出を彩る大切なアイテムになります。
  • 見ると安心するアイテム: ふわふわのブランケット、優しい音色のオルゴール、可愛らしいぬいぐるみ。物理的に必要なものではなくても、あなたの心を和ませ、安心させてくれるアイテムが一つあると、妊娠中の不安な気持ちに寄り添ってくれます。お腹の赤ちゃんに「これがあなたのものだよ」と語りかけるのも素敵です。

③ 赤ちゃんを待つ時間を楽しむこと

育児準備リストには決して書かれることのない、しかし最も重要かもしれないのが、お腹の赤ちゃんと過ごす時間を慈しむことです。これは、母親になるための、かけがえのない「心の準備」と言えるでしょう。

  • お腹をなでる: 手のひらを通して伝わる温もりは、言葉以上に多くの愛情を赤ちゃんに伝えます。お腹が大きくなるにつれて感じる胎動に合わせ、優しくなでてあげましょう。その触れ合いは、赤ちゃんとあなたとの最初のコミュニケーションです。
  • 話しかける: 赤ちゃんは、お腹の中にいるときからお母さんの声を聞いています。「おはよう」「今日は天気がいいね」「パパが帰ってきたよ」など、日常の出来事を優しく語りかけてあげましょう。その声は赤ちゃんにとって何よりの安心材料になります。
  • 名前を考える: 赤ちゃんへの最初の贈り物である名前。どんな子に育ってほしいか、どんな人生を歩んでほしいか。画数や響き、意味などを調べながら、パートナーとじっくり話し合う時間は、親になる実感を与えてくれます。候補をいくつか考え、お腹に向かって呼びかけてみるのも良いでしょう。

無理に「準備しなくていいこと」

一方で、焦りや不安を煽るだけで、実際にはあまり意味をなさない準備も存在します。ここでは、思い切って「やらなくてもいい」と決めてしまうことで、心が軽くなる準備の例を3つ挙げます。

① すべてを妊娠中に決めること

先の見えない未来に対して、完璧な計画を立てようとすることは、かえって自分を追い詰める原因になります。特に育児に関しては、生まれてからでないと分からないことの方が圧倒的に多いのです。

  • 細かい育児ルール: 「母乳は絶対に3時間おき」「寝かしつけはネントレを徹底する」「テレビは一切見せない」など、妊娠中に厳格なルールを決めても、赤ちゃんの個性やその日の体調によって、思い通りにいかないことばかりです。生まれてくる赤ちゃんは、マニュアル通りに動くロボットではありません。まずは「赤ちゃんの様子を見ながら、柔軟に対応しよう」という心構えを持つことが何よりも大切です。
  • 先のサイズの服: 「どうせすぐに大きくなるから」と、1歳や2歳用の服まで買い揃えてしまうのは避けましょう。季節が合わなかったり、赤ちゃんの成長スピードが想定と違ったり、好みが変わったりすることもあります。まずは新生児期から生後半年くらいまでに必要な最低限の枚数を揃え、あとは必要に応じて買い足していく方が、無駄がなく経済的です。
  • 完璧なスケジュール: 「起床時間、授乳時間、お昼寝時間、お風呂の時間…」と、1日の完璧なタイムスケジュールを組んでも、最初のうちはほとんど計画通りに進みません。新生児期は、赤ちゃんのリズムに合わせて大人が動く時期です。スケジュールに縛られすぎると、「計画通りにできない自分はダメな母親だ」と自己嫌悪に陥ってしまいます。

② みんなと同じ準備をすること

SNSや友人からの情報は参考になりますが、それを鵜呑みにして「みんなが持っているから自分も買わなくては」と考えるのは危険です。準備の最適解は、人それぞれ異なります。

他の人の準備は、その人の住環境、経済状況、価値観、ライフスタイル、そして頼れる人の有無など、様々な背景に基づいて選択されたものです。例えば、都市部のマンションに住んでいる人と、郊外の一戸建てに住んでいる人では、必要なベビーカーの種類も異なります。実家のサポートが手厚い人と、夫婦二人だけで乗り切る人では、揃えるべきベビー用品の量も変わってくるでしょう。

大切なのは、「あの人が良いと言っていたから」ではなく、「自分の生活にとって、これは本当に必要か?」と自問自答することです。あなたに合う準備は、あなた自身にしか決められません。

③ 不安になるほど情報を集めること

情報は、本来、私たちを安心させるために役立つツールです。しかし、使い方を誤ると、不安を増幅させる毒にもなり得ます。

特にインターネット上には、医学的根拠の乏しい情報や、極端な体験談、ネガティブな情報が溢れています。出産や育児に関する様々なリスクやトラブル事例を読み漁り、夜も眠れなくなるほど不安になってしまう…そんな経験はありませんか?

読んでいて苦しくなったり、気持ちが沈んだりする情報は、今のあなたには必要ない情報です。信頼できる医師や助産師からの情報、公的機関が発信する情報に絞り、それ以外の情報からは意識的に距離を置く勇気を持ちましょう。時には「デジタルデトックス」として、スマートフォンやPCから離れる時間を作ることも有効です。

線引きに迷ったときの、シンプルな判断基準

「この準備は、楽しみになるもの?それとも不安からくるもの?」その線引きに迷ったときは、自分の心に問いかけてみてください。基準はとてもシンプルです。

その準備は「心が軽くなる?」

  • ワクワクする
  • 安心する
  • 楽しみが増える

もし答えが「Yes」なら、それはあなたにとって「やっていい準備」です。その気持ちを大切に、準備を進めてください。

その準備は「心が重くなる?」

  • 焦る
  • 他人と比べてしまう
  • 不安が増える

もし答えが「Yes」なら、それは「今はやらなくていい準備」です。一度立ち止まり、その準備から距離を置いてみましょう。後回しにしたり、いっそのこと「やらない」と決めたりしても、何も問題はありません。

このシンプルな基準を持つだけで、多くの準備は自然に整理され、本当にやるべきこと、楽しむべきことが見えてくるはずです。

「やらない準備」を決めると、妊娠期間はもっとやさしくなる

私たちはつい、何かを「足す」ことで安心しようとします。しかし、情報や物で溢れる現代において、特に心身がデリケートになる妊娠中は、むしろ「引き算」をすることで心が楽になることが多いのです。

  • 全部そろえなくていい: 最低限必要なもの以外は、生まれてから必要だと感じた時に買い足せば十分間に合います。
  • 完璧じゃなくていい: 育児に完璧な正解はありません。少し肩の力を抜いて、「まあ、なんとかなるか」と構えるくらいが丁度良いのです。
  • 後回しでいい: 今決めなくても良いことは、無理に決めない。産後の生活が落ち着いてから、ゆっくり考えれば良いこともたくさんあります。

このように、「やらないこと」を意識的に決める。それもまた、母親と赤ちゃんにとって、心穏やかな毎日を送るための立派な「出産準備」なのです。

まとめ|妊娠中の準備は「楽しみを守るための線引き」

妊娠中の準備は、義務やタスクではありません。これから始まる新しい生活への期待を膨らませ、赤ちゃんへの愛情を育むための、喜びに満ちた時間であるべきです。

  • 楽しみになる準備は、心ゆくまでしていい
  • 不安になる準備は、無理にしなくていい
  • 量よりも「自分の気持ちが動くか」を大切に
  • 特別な「1つ」を選べば、それで十分
  • 「やらない」と決める引き算の準備が、心を軽くする

妊娠期間は、赤ちゃんを迎えるためだけのものではありません。母親になるあなた自身を、誰よりもいたわり、大切にするための時間でもあります。

準備に追われすぎず、楽しんでいいことを、心から楽しむ。どうか、そんな穏やかで幸せなマタニティライフを送ってください。

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