退院して、赤ちゃんとのはじめての生活がついにスタートしました。妊娠中から待ちわびていたはずの我が子との暮らし。
しかし、現実は想像していたよりもずっと過酷で、心も体も追いつかない日々かもしれません。
「ちゃんとお世話をしなきゃいけないのに」
「早く元の生活に戻して、家事をこなさなきゃ」
「みんなやってることなのに、どうして私はこんなに辛いんだろう」
そう頭では思っているのに、身体が鉛のように重くて動けない。気づけば一日中パジャマのままで、鏡を見る気力もない。ふと周りを見渡せば、洗濯物の山や洗い物が溜まったシンクが目に入り、さらに自己嫌悪に陥ってしまう…。
もし今、あなたがそんなふうに自分を「ダメなママだ」「何もできない」と責めてしまっているなら、どうか一度立ち止まって、この記事を読んでみてください。
まず最初にお伝えしたいのは、産後に「何もできない」と感じるのは、あなたが怠けているからでも、能力が低いからでも、母親失格だからでもないということです。
それは、命がけの大仕事を終えた身体が「今は休んで!お願いだから止まって!」と必死にサインを出している証拠なのです。新生児期のママにとって、「何もしないこと」こそが、これから長く続く育児生活と、何より大切な赤ちゃんのための立派な仕事なのです。
この記事では、初めての育児に追われ、思うように動けず苦しんでいるママへ向けて、心を軽くするための考え方と、具体的な乗り切り方を徹底的に詳しく解説します。
なぜ産後は「何もしない」が仕事なのか?身体で起きている真実
「出産は鼻からスイカが出るくらい痛い」とはよく言われますが、その後の身体のダメージについては、あまり詳しく語られることがありません。実は、出産という経験は、**「交通事故で全治数ヶ月の重傷を負った」**のと同じくらいのダメージを身体に与えると言われています。
見た目には五体満足で、普通に歩けるように見えるかもしれません(あるいは、歩くのさえ辛いかもしれません)。しかし、あなたの身体の中では、劇的で深刻な変化が起きています。
見えないダメージの深刻さ
まず、子宮の状態です。妊娠中に約2000倍〜3000倍もの大きさにまで膨らんだ子宮は、出産直後から急速に収縮を始めます。これは「後陣痛」とも呼ばれ、非常に大きなエネルギーを要するプロセスです。子宮の内側には胎盤が剥がれた後の大きな傷があり、出血が続いている状態です(悪露)。
さらに、骨盤へのダメージも甚大です。赤ちゃんを通すために大きく開いた骨盤は、周囲の靭帯や筋肉に大きな負荷をかけています。グラグラと不安定な状態で、立っているだけでも筋肉に負担がかかっているのです。会陰切開や帝王切開の傷の痛みも、当然ながら体力を奪います。
ホルモンバランスの急激な乱高下
身体的な傷だけではありません。ホルモンバランスの変化も「ジェットコースター」に例えられるほど激しいものです。
妊娠中に大量に分泌されていた女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)が、出産と同時にほぼゼロに近い状態まで急降下します。この急激な落差は、自律神経を乱し、情緒不安定や激しい疲労感、不眠などを引き起こします。いわば、身体の内部システムが総入れ替えされているような緊急事態なのです。
心と身体の「強制シャットダウン」機能
産後、「何もできない」「動きたくない」と感じるのは、こうした深刻なダメージを負った身体が、防衛本能として**「強制シャットダウン」**を起こしているからです。
脳が「これ以上動いたら危険だ」「今は回復に全エネルギーを回さなければならない」と判断し、活動レベルを強制的に下げているのです。
ですから、もし今あなたが布団から出られずに赤ちゃんと横になっているなら、それは**「正しい回復のプロセス」**の中にいます。決して「サボっている」のではありません。「次の生活に向けてエネルギーをチャージしている」「壊れたシステムを修復している最中」なのです。そう捉え直してみてください。むしろ、動いてはいけない時期に無理をして動くことの方が、後の回復を遅らせ、更年期などの将来の健康にまで影響を及ぼす可能性があるとも言われています。
先輩ママもそうだった。「最低限これだけ」の命を守るリスト
初めての育児では、責任感から「あれもこれも完璧にこなさなければ」と自分を追い込んでしまいがちです。
育児書やネットの情報には「理想的なスケジュール」や「知育のための語りかけ」「スキンケアの手順」などが溢れています。それらを見て、「全部やらなきゃ」と思ってしまっていませんか?
でも、断言します。今の時期、新生児期(生後28日間)に本当にやらなければならないことは、実はほんの少ししかありません。
多くの先輩ママたちが、後になって「これだけやっておけば大丈夫だった」「もっと手を抜けばよかった」と口を揃える、究極の「命を守るリスト」があります。今のあなたのタスクは、これだけで十分です。
1. 赤ちゃんがおっぱい(ミルク)を飲めている
母乳でもミルクでも、混合でも構いません。赤ちゃんが必要な栄養を摂取できていれば、それでOKです。
授乳間隔が空いてしまったり、頻回授乳になったり、うまくいかなくて悩むこともあるでしょう。でも、トータルで見て赤ちゃんが飲んでくれていれば、最大のミッションはクリアです。
2. 赤ちゃんが排泄できている
おしっこやうんちが出ていることは、栄養が足りている証拠であり、内臓が動いている証拠です。
オムツ替えの回数や色をチェックできていれば、あなたは赤ちゃんの健康管理という高度な仕事をこなしています。
3. ママが少しでも眠れている
これが最も見落とされがちですが、最も重要な項目です。
「赤ちゃんの世話」には「ママの健康維持」も含まれます。ママが倒れてしまっては、赤ちゃんの命を守ることができません。細切れでも、短時間でも、あなたが目を閉じて休息を取れているなら、それは立派な「育児業務」です。
極論、これ以外はすべてオプション
極端な話、上記の3つさえクリアできていれば、その日は100点満点、いや120点満点です。それ以外のことは、今の時期はすべて「余裕があればやるオプション」だと考えてください。
- 掃除はしなくていい
部屋の隅に埃が溜まっていても、洗濯物が山積みでも、それで赤ちゃんの命に関わることはめったにありません。衛生面が気になるなら、赤ちゃんが寝ているスペース周りだけ綺麗なら十分です。床が見えなくても死にはしません。 - ご飯は作らなくていい
「母乳のために和食を作らなきゃ」なんて思わないでください。今はカロリーを摂取することが最優先です。レトルト食品、冷凍食品、デリバリー、コンビニ弁当、家族に買ってきてもらうお惣菜。文明の利器と周囲の力をフル活用してください。キッチンに立つ時間を、横になる時間に充てましょう。 - 着替えなくていい
一日中パジャマで過ごすことに罪悪感を持つ必要はありません。パジャマは授乳しやすく、身体を締め付けず、すぐに休息体勢に入れる、産後ママにとっての「正装」であり「戦闘服」です。赤ちゃんが吐き戻して汚れたりしない限り、着替える必要すらありません。
「今日は何もしなかった」と日記に書く必要はありません。
「今日も赤ちゃんの命を守り抜いた」。そう胸を張ってください。それだけで、あなたは誰も代わりのきかない、十分に素晴らしい仕事を成し遂げています。
「理想のママ」像を少しだけ横に置いてみる
スマホを開けば、SNSにはキラキラした産後ママたちの投稿が溢れています。
「産後2週間ですが、手作りランチプレート作りました!」
「退院祝いに家族でお出かけ。メイクもバッチリ!」
「部屋を整えて、ベビーベッドの周りもおしゃれにデコレーション」
そんな写真や動画を見て、「それに比べて私は…髪もボサボサで、部屋も荒れ放題…」と落ち込んでしまう気持ち、痛いほど分かります。まるで世界中で自分だけが上手くいっていないような孤独感を感じるかもしれません。
でも、どうか思い出してください。SNSで見えているのは、24時間の中のほんの一瞬、奇跡的にうまくいった瞬間の「切り取り」に過ぎません。その写真を撮る前後には、泣き止まない赤ちゃんを抱っこして途方に暮れていたり、散らかった部屋の片隅で撮影していたりするかもしれないのです。
人と比べることの無意味さ
産後の回復スピードは、個人差が非常に大きいです。安産だったか難産だったか、帝王切開だったか、もともとの体力はどうだったか。
また、赤ちゃんの性格(よく寝る子か、敏感で泣きやすい子か)によっても、ママの負担は天と地ほど違います。
さらに、里帰りしているか、パートナーが育休を取っているか、ワンオペかといった環境の違いもあります。
条件が全く違う他人と自分を比べて落ち込むことに、今は1ミリの意味もありません。比較対象にするなら「昨日の自分」ではなく、「今、目の前で生きている赤ちゃん」だけにしてください。
今は「降伏」の時期と割り切る
yonkaでは、この新生児期を**「赤ちゃんへの全面降伏期間」**と呼ぶことを提案しています。
大人の都合、大人のスケジュール、大人の理想。「こうあるべき」「こうしたい」という自我はいったんすべて手放して、白旗を上げるのです。
赤ちゃんの「泣きたい」「飲みたい」「抱っこしてほしい」「寝たくない」という本能のペースに、完全に身を委ねてみる。
「思うようにいかなくて当たり前」
「予定通りに進まなくて当然」
「今日は一日中抱っこで終わったけど、それが赤ちゃんの望みなら仕方ない」
そう開き直って「降伏」してしまった方が、不思議と肩の力が抜け、精神的に楽になる瞬間があります。抗うから辛くなるのです。波に身を任せるように、赤ちゃんのペースに流されてみてください。
理想の「素敵なママ」「テキパキこなすママ」を目指すのは、身体が回復して、夜まとまって寝られるようになって、心に余裕ができてからで十分間に合います。
今は、あなた自身を一番に甘やかして、ハードルを地面スレスレまで下げてあげてください。
Q&A:産後ママの「あるある」なお悩みに答えます
ここでは、多くのママたちが抱える具体的な不安や疑問について、Q&A形式でお答えします。
Q. 一日中寝てばかりで、働いている夫や手伝いに来てくれる家族に申し訳ないです。
A. 罪悪感は不要です。今は「回復期」という重要な役割分担の時期です。
パートナーや家族が働いたり家事をしたりしている間、あなたは「命がけで出産した身体を治す」という仕事をしています。そして「24時間体制で命を見守る」という仕事をしています。
今のあなたは、いわば「全治数ヶ月の重傷患者」と同じ状態です。怪我人が休んでいるのを見て「申し訳ない」と思う人はいないはずです。
あなたが今しっかりと休むことは、将来早く元気になって、笑顔で家族と過ごすための「先行投資」です。無理をして回復が遅れれば、結果的に家族全体の負担が長引くことになります。
申し訳なく思う必要はありません。「ありがとう、助かるよ」と感謝の言葉だけ伝えて、堂々と、ふてぶてしいくらいに休んでください。
Q. 家の中が散らかっていて、目に入るとイライラしてしまいます。
A. 「見ないふりスキル」を磨くか、物理的に解決しましょう。
ホルモンバランスの影響で、普段気にならないような汚れや散らかりが猛烈にストレスになることがあります(ガルガル期の一種とも言えます)。
解決策は2つです。
1つ目は、家事代行サービス(シルバー人材センターなども安価でおすすめです)や、パートナー、親族に頼んで物理的に片付けてもらうこと。「今だけだから!」と割り切って外部リソースを使いましょう。
2つ目は、それが難しい場合、「見ないふり」のスキルを磨くことです。散らかった部屋の一部に布をかけて隠す、赤ちゃんスペース以外は見ないようにする、など視界に入れない工夫を。
今は「散らかっていても死なない」と割り切るメンタルトレーニングの期間だと思ってください。完璧を求めない適当さは、これからの長い長い育児生活において、あなたを救う最強の武器になります。
Q. いつになったら元の生活、元の体調に戻れますか?
A. まずは1ヶ月検診をゴールに。完全回復にはもっと時間がかかります。
一般的に、産後6〜8週間を「産褥期(さんじょくき)」と呼び、身体が妊娠前の状態に戻ろうとする期間とされています。まずは「1ヶ月検診」が終わる頃が、ひとつの目安です。そこまでは「養生モード」で、外出も控えて家の中で過ごしましょう。
1ヶ月検診で医師からOKが出れば、少しずつお散歩を始めたり、湯船に浸かったりできるようになります。
ただし、「元の生活」に完全に戻るには、半年から1年近くかかることも珍しくありません。体型や体力が戻るペースには個人差があります。
「1ヶ月経ったからもう大丈夫!」と急にフル稼働すると、ガクッと体調を崩すこともあります。アクセルはいきなり踏み込まず、徐々に、本当に徐々に踏んでいくイメージで。自分の身体の声を聞きながら、焦らずゆっくりペースを戻していけば大丈夫です。
まとめ|今は赤ちゃんとの呼吸を合わせるだけで100点
産後の「何もできない」「辛い」という感覚は、永遠に続くように思えるかもしれません。暗いトンネルの中にずっといるような不安に襲われることもあるでしょう。
でも、これだけは信じてください。この状態は、決して長くは続きません。
身体が回復するにつれて、ホルモンバランスが整うにつれて、そして赤ちゃんが成長するにつれて、少しずつ、本当に少しずつですが、霧が晴れるように楽になる日が必ず来ます。できることは確実に増えていきます。
だから今は、焦らなくて大丈夫。
今日一日、あなたがパジャマのまま、赤ちゃんの横でゴロゴロしていたとしても、それは無駄な時間ではありません。
赤ちゃんの温かさを感じ、匂いを嗅ぎ、寝息を聞きながら、一緒に横になっているその時間こそが、今しかできない、何よりも尊い育児の時間です。
赤ちゃんと呼吸を合わせ、ただ一緒に生きている。それだけで、あなたは100点満点のママです。
もし、不安で押しつぶされそうになったら、またこの記事を読みに来てください。
yonkaはいつでも、頑張るあなたの味方です。完璧じゃなくていい、適当でいい。今日一日を生き抜いた自分を、どうかたくさん褒めてあげてくださいね。
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