朝からコトコトと小鍋で野菜を煮込み、柔らかくなるまで火を通す。
繊維が残らないように丁寧に、丁寧に裏ごしをして、滑らかなペースト状にする。
冷ましている間に、小さじ1杯分のお粥を用意して、温度を確かめる。
「さあ、〇〇ちゃん、ご飯だよ。美味しい人参さんだよ、あーん」
期待と愛情を込めて差し出したスプーン。
赤ちゃんはそれをパクッと口に含んだかと思うと……次の瞬間。
べーッ。
(プイッ)
口に入れたものをすべて吐き出し、顔を背ける我が子。
その瞬間、あなたの心の中で「プチッ」という音とともに、何かが切れる音がしませんでしたか?
「せっかく時間をかけて作ったのに!」
「なんで食べてくれないの?」
「栄養を摂らせなきゃいけないのに……」
「もう、作りたくない……」
床やスタイに散らばったドロドロの離乳食を拭き取りながら、ふと涙が溢れてくる。
もしあなたが今、そんな限界ギリギリの状態にいるのなら、どうか今すぐキッチンから離れて、深呼吸をしてください。
そして、自分を責めるのをやめてください。
真面目で愛情深いママほど、「離乳食は手作りこそが至高」「レトルト(ベビーフード)ばかり使うのは愛情不足で手抜き」という呪縛に囚われ、自分自身を追い詰めてしまいがちです。SNSを開けば、キラキラした手作り離乳食の投稿が溢れ、自分の現状と比べて落ち込んでしまうこともあるでしょう。
でも、はっきりと言わせてください。
離乳食という戦場において、「ママの笑顔」に勝る調味料はありません。
イライラと絶望を漂わせながらあげる最高級の手作りご飯よりも、ママがニコニコと笑ってあげてくれるレトルトフードの方が、赤ちゃんにとっては100倍美味しく、栄養になるのです。
今日は、あなたの心にこびりついた不要な罪悪感を消し去り、市販のベビーフード(BF)を「単なる手抜き」ではなく、「味覚の英才教育」であり「賢い育児戦略」として捉え直す、新しい視点をお話しします。
なぜこれほどまでに離乳食作りは「つらく、苦しい」のか?その正体は「報われない労働」だから
そもそも、なぜ離乳食作りはこれほどまでに精神を削られるのでしょうか。
料理が苦手だから? あなたの忍耐力が足りないから?
いいえ、絶対に違います。
離乳食作りがつらい最大の理由。それは、この作業が料理というクリエイティブな行為ではなく、「終わりのない科学実験」や「成果の出ない単純作業」に近い性質を持っているからです。
大人のための食事作りなら、「美味しいね!」「ありがとう」という感謝の言葉や、綺麗に完食されたお皿という「成果」が返ってきます。そのフィードバックがあるからこそ、料理を作るモチベーションは保たれます。
しかし、離乳食はどうでしょうか。
相手は言葉の通じない赤ちゃんです。
どんなに手間暇をかけて出汁をとり、無農薬野菜を選んでも、その努力は一切考慮されません。
気まぐれに口を閉じ、手で払いのけ、時にはお皿ごとひっくり返されることすらあります。
これほどまでに「成果(食べてくれること)が保証されないのに、膨大な手間と時間だけがかかる労働」が、他にあるでしょうか?
もしこれが会社の業務であれば、従業員からストライキが起き、即座に業務改善命令が出るレベルの「ブラック労働」です。
努力が報われない徒労感。それが毎日3回、休みなく続くのです。心が折れて当たり前なのです。
だから、「つらい」「もうやめたい」と思う自分を、どうか責めないでください。
それはあなたが母親失格だから思うことではありません。
担当している業務内容があまりにも過酷で、理不尽だからです。
まずは鏡の中の自分に向かって、「私、本当によくやってるよ。すごいよ」と、最大限の労いの言葉をかけてあげてください。
罪悪感は不要!レトルト(BF)は手抜きではなく「プロフェッショナルへの業務委託」
「でも、やっぱり市販品ばかりだと罪悪感が……」
そう感じるママにこそ知ってほしい真実があります。
市販のベビーフード(BF)を使うことは、決して「手抜き」ではありません。
これは、育児という巨大プロジェクトの一部を、「栄養と味覚のプロフェッショナル集団」に「外部委託(アウトソーシング)」するという、極めて賢明で合理的な経営判断です。
ベビーフードメーカーの研究員たちは、赤ちゃんの成長に必要な栄養、味覚の発達、食べやすい固さなどを、莫大な研究費と時間をかけて徹底的に分析しています。
いわば、ベビーフードは彼らの叡智が詰まった「最高傑作」なのです。これを活用しない手はありません。
具体的に、どのようなメリットがあるのかを詳しく見ていきましょう。
1. 家庭では再現不可能なレベルの「完璧な栄養バランス」
特に生後9ヶ月以降(カミカミ期〜)になると、赤ちゃんは体内に貯蔵していた鉄分を使い果たし、食事から積極的に「鉄分」を摂取する必要が出てきます。
しかし、鉄分を多く含むレバーや赤身肉を、赤ちゃんが食べやすいように下処理し、臭みを消して調理するのは至難の業です。それを毎日続けるとなれば、ママの睡眠時間はゼロになってしまいます。
その点、市販のベビーフードは優秀です。
月齢ごとに不足しがちな栄養素が計算され尽くして配合されています。鉄分、カルシウム、ビタミン類。これらが完璧なバランスで管理されているのです。
「私が苦労して作るよりも、このパウチの方が栄養満点だわ」
そう開き直ってしまって全く問題ありません。むしろ、それは事実なのですから。
2. 赤ちゃんが学ぶべき「正しいとろみ・硬さ」の教材
離乳食作りで多くのママが悩むのが、「今の時期、どれくらいの硬さが正解なの?」という問題です。
「お豆腐くらいの硬さ」「バナナくらいの硬さ」と言われても、実際に作るとなると水分量の調整が非常に難しいものです。
ベビーフードは、その月齢の咀嚼(そしゃく)能力に最適な硬さ、大きさ、とろみ具合に調整されています。
これは単なる食事ではなく、赤ちゃんにとって「あ、これくらいの力で噛めばいいんだ」「この大きさなら飲み込めるんだ」と学習するための、**「噛む練習の教材」**そのものです。
手作りの硬さにムラがあって食べにくいよりも、一定の品質が保たれた教材を使うほうが、赤ちゃんの「食べるスキル」は上達しやすい場合さえあります。
3. 未知の味に出会わせる「味覚の英才教育」
家庭で離乳食を作ると、どうしても味付けがマンネリ化しませんか?
かつお出汁、昆布出汁、少しの醤油、味噌。これらをローテーションする日々になりがちです。
もちろん和食は素晴らしいですが、世界にはもっと多様な味が存在します。
市販のベビーフード売り場を見てみてください。
「チキンのトマト煮込み」「白身魚のクリーム煮」「五目あんかけ」「レバーと野菜のハヤシライス風」……。
家庭で作るには手間がかかりすぎる、バラエティ豊かなメニューが並んでいます。
幼い頃から、トマトの酸味、クリームのまろやかさ、様々な食材の風味に触れることは、赤ちゃんの味覚の幅を広げる**「食育」であり、まさに「味覚の英才教育」**です。
「今日はプロのシェフのイタリアンよ」そんな気持ちで封を開ければいいのです。
離乳食における優先順位の第1位は「栄養」ではない。「楽しい食卓」こそが正義
ここで、離乳食の本当の目的を思い出してみましょう。
離乳食の最大の目的は、「完璧な栄養を摂取すること」でしょうか?
「アレルギー食材をすべてクリアすること」でしょうか?
いいえ、違います。
最も大切な目的は、**「食事とは楽しいものだと、赤ちゃんに教えること」**です。
想像してみてください。
栄養満点の手作りご飯だけど、目の前のママが鬼のような形相で、「ほら!食べなさい!」「なんで残すの!」とスプーンを押し付けてくる食卓。
そこは赤ちゃんにとって、安らぎの場ではなく「恐怖の時間」になってしまいます。
食事=怒られる時間、という刷り込みがされてしまえば、食への興味そのものを失ってしまうかもしれません。
逆に、たとえメニューがレトルトやお惣菜であったとしても、ママがリラックスして、「これ美味しいね〜!」「いい匂いだ音〜」とニコニコ笑って食べている食卓。
そこは赤ちゃんにとって「幸せな時間」になります。
「ママが笑ってる。ご飯の時間って楽しいんだな」
そう感じることこそが、将来の「食べる意欲」や「好奇心」を育む土壌になるのです。
栄養は、今はまだフォローアップミルクや母乳で補うことができます。サプリメントだってあります。
でも、「食への好奇心」や「食事の楽しさ」は、楽しい食卓の雰囲気でしか育ちません。
どうか、「手作りすること」にエネルギーを使い果たさないでください。
そのエネルギーは、「ママが笑顔でいること」のために取っておいてください。
全部変えなくていい。賢いママは「ハイブリッド」で乗り切る
「レトルトが良いのはわかったけれど、毎日3食すべてベビーフードにするのは経済的に負担が……」
「やっぱり、少しは手作りの味も覚えてほしい親心もある……」
そんな葛藤があるのなら、**「ハイブリッド(いいとこ取り)」**をおすすめします。
0か100かで考える必要はありません。手作りと市販品を賢く組み合わせるのです。
テクニック1:主食は炊飯器、おかずはプロ任せ
お粥や軟飯は、炊飯器で大人用のご飯と一緒に炊くことができます(湯呑みにお米と水を入れて炊飯器の真ん中に置く方法など)。
主食はコストのかからない自宅炊飯にして、手間のかかる「おかず」や「ソース」だけベビーフードを活用する。これなら経済的負担も減り、準備も一瞬です。
テクニック2:野菜の「ちょい足し」アレンジ
レトルトのソースや煮物に、茹でてストックしておいたブロッコリーや人参、豆腐などをポイッと足す方法です。
ベースの味付けはプロ(ベビーフード)が決めてくれているので失敗がありません。そこに具材を増やすことで、「手作りした感」も味わえますし、ボリュームもアップします。
テクニック3:ベビーフードを「調味料」として使う
「ホワイトソース」や「あんかけの素」などの粉末タイプやパウチを、調味料として使うのも手です。
茹でたうどんにベビーフードの「五目あんかけ」をかけるだけ。茹でたジャガイモに「コーンクリームスープ」を混ぜるだけ。
これなら、「ママが作った」という実感と、「プロの味」の確実さを両立できます。
疲れた日は全食レトルトでOK。
余裕がある週末だけ手作りでOK。
その日のママの体力メーターに合わせて、柔軟に使い分ければいいのです。
まとめ|3歳になれば「ポテトしか勝たん」時期が来る。だから今はもっと肩の力を抜いて
最後に、少し先の未来の話をして、あなたの肩の荷を下ろしたいと思います。
今、あなたが血眼になって栄養バランスを考え、無添加やオーガニックにこだわり、一生懸命離乳食を食べさせていたとしても。
子どもが3歳くらいになると、ある日突然こう言い出す時期が来ます。
「ヤダ!アンパンマンポテトしか食べない!」
「マクドナルドのハッピーセットがいい!」
「白いご飯しか食べたくない!」
これは冗談ではなく、多くの先輩ママたちが通る道です(笑)。
あんなに苦労して野菜を裏ごしした日々は何だったの?と笑いたくなるくらい、ジャンクな味や特定のメニューに固執する時期がやってきます。
そしてまた成長すれば、給食で野菜を食べるようになり、味の好みはどんどん変わっていきます。
つまり、今の時期の「食べた・食べない」「手作りか・レトルトか」という悩みは、子どもの長い人生というスパンで見れば、ほんの些細な誤差に過ぎないのです。
今、完璧を目指して眉間にシワを寄せる必要はどこにもありません。
だから、今日はもうキッチンに立つのをやめて、お気に入りのベビーフードを開けましょう。
そして、浮いた時間でママは温かいコーヒーでも淹れて、赤ちゃんと一緒に「いただきます」をしてください。
「今日は有名なシェフが作ったリゾットよ。美味しいわね」
それくらい気楽なスタンスが、今のあなたと赤ちゃんにはちょうどいいのです。
ママの笑顔こそが、最高のごちそうです。
どうか、無理をしないで、便利なものに頼りながら、この時期を乗り越えていきましょう。
よくある質問(Q&A)
最後に、レトルト利用に関してママたちが抱きがちな不安にお答えします。
Q. 毎日ベビーフードだと、味付けが濃くて舌がバカになりませんか?
A. 全く心配いりません。日本の基準は世界トップクラスに厳しいです。
日本のベビーフード規格(日本ベビーフード協議会)は非常に厳格で、塩分量は厳しく制限されています。大人が味見をして「味がしっかりしている」と感じるのは、塩分ではなく「出汁(うまみ)」が効いているからです。
カツオや昆布、野菜の旨味をしっかり感じることは、むしろ繊細な味覚を形成するために良い影響を与えます。安心してください。
Q. 添加物がやっぱり心配です……。
A. 気になる場合は「無添加」シリーズを選べば解決です。
一般的なベビーフードも安全性は確保されており、保存料や着色料を使っていないものがほとんどです。それでも気になる場合は、パッケージ裏面を見て原材料がシンプルなものを選んだり、「オーガニック」「無添加」を謳うプレミアムラインのベビーフードを選んだりするのも良いでしょう。
手作りする手間をお金で買うと思えば、少し割高でも「ママの安心料」として安いものです。
Q. レトルトばかりだと「おふくろの味」を忘れませんか?
A. 離乳食は「おふくろの味」の記憶にカウントされません。
私たちが大人になって思い出す「おふくろの味」とは何でしょうか? おそらく、小学生や中学生の頃に食べたハンバーグや唐揚げ、卵焼きではないでしょうか。
1歳未満のドロドロのペーストの味を鮮明に覚えている大人はいません。
今は「生命維持のための栄養補給」と割り切って大丈夫です。「おふくろの味」を振る舞うチャンスは、幼児食や普通食になってから、これから何千回とやってきます。今は焦らず、プロの力を借りて生き抜きましょう。
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