「朝は決まった時間にカーテンを開けて、日光浴をさせましょう」
「お風呂は毎日同じ時間に入れて、一日のリズムを作りましょう」
育児書やウェブサイト、SNSを開けば、新生児の生活リズムを整えるためのアドバイスが溢れています。こうした情報に触れるたび、「やらなきゃ」というプレッシャーを感じてしまうママは多いのではないでしょうか。
しかし、現実は理想通りにはいきません。夜中の数時間おきの授乳や夜泣き対応で心身ともにボロボロの状態では、朝決まった時間に起き上がることすら至難の業です。思うようにいかない日々が続くと、「私がだらしないから、この子の生活リズムが整わないんだ」「ダメな母親だ」と、自分を責めてしまうこともあるでしょう。
もし今、あなたがそんな風に悩んでいるなら、どうか安心してください。
結論から言うと、新生児期に生活リズムが整わないのは、ママの努力不足や育て方が原因ではありません。それは、赤ちゃんの身体の仕組み上、ごく自然で「当たり前」のことなのです。
この記事では、理想のスケジュールを追いかけるのをやめて、ママと赤ちゃんが少しだけ気持ちを楽にするための考え方と、この特別な時期を乗り切るための具体的なヒントを詳しくお伝えします。
新生児期に「リズム」が存在しない科学的な理由
なぜ、どんなにママが規則正しい生活を心がけても、新生児の生活リズムは整わないのでしょうか。そこには、赤ちゃんの未熟な身体機能に基づいた、明確な科学的理由が存在します。
1. 「体内時計」がまだ未完成だから
私たち大人が、朝になると自然に目が覚め、夜になると眠くなるのは、「概日リズム(サーカディアンリズム)」と呼ばれる、約24時間周期の体内時計が身体に備わっているからです。この体内時計は、光を浴びることでリセットされ、睡眠ホルモンである「メラトニン」の分泌をコントロールしています。
しかし、生まれたばかりの赤ちゃんには、この体内時計の機能がまだ備わっていません。胎内にいた頃は昼も夜も関係なく過ごしていたため、外の世界に出てきても、そのリズムがすぐには確立されないのです。
研究によると、赤ちゃんが光を感知して体内時計を調整し始め、昼夜の区別がつき始めるのは、早くても生後2ヶ月頃から。一般的には、生後3〜4ヶ月頃にかけて、徐々に睡眠と覚醒のリズムが形成されていくと言われています。
つまり、新生児期の赤ちゃんにとって、「昼も夜も関係なく、お腹が空いたら起きて泣き、満たされたら寝る」というサイクルを繰り返すことこそが、生物学的に見て正常な状態なのです。大人の都合で朝起こそうとしても、体内時計がまだセットされていないため、効果は薄いと言えるでしょう。
2. 胃の容量が極端に小さいから
新生児のリズムが存在しないもう一つの大きな理由は、その身体の小ささ、特に胃の容量にあります。生まれたばかりの赤ちゃんの胃の大きさは、さくらんぼ一粒程度(約5〜7ml)しかありません。生後1週間でようやくピンポン玉くらいの大きさ(約45〜60ml)になります。
これほど胃が小さいため、一度にたくさんの母乳やミルクを飲むことができません。そして、消化吸収のスピードも非常に速いため、すぐに空腹になってしまいます。だからこそ、2〜3時間おきという短い間隔で起きて、エネルギーを補給する必要があるのです。
「夜まとめて寝てくれない」「すぐに起きてしまう」というのは、赤ちゃんがわがままを言っているわけではなく、生きるために必死に栄養を求めている証拠です。不規則な睡眠パターンは、赤ちゃんの生命維持のためにプログラムされた、極めて合理的な仕様なのです。
ママが寝られる時が寝る時。「時計を見ない育児」のススメ
「生活リズムを整えなきゃ」という考えに囚われると、どうしても私たちは時計を気にしてしまいます。
「もう朝7時だから、カーテンを開けて起こさなきゃ」
「昼寝が長すぎる気がする。このままじゃ夜寝なくなるから起こすべき?」
「お風呂は19時って決めたのに、まだ寝てる…どうしよう」
こうした思考は、ママに不要なプレッシャーと罪悪感を与えます。そこで、yonkaとしては、この新生児期に限っては、思い切って**「時計を見ない育児」**を実践することをおすすめしたいと考えています。
大人が赤ちゃんのペースに合わせる「時差ボケ」生活
今は、ママも赤ちゃん専用のタイムゾーンで生きていると捉えてみてください。それはまるで、海外旅行で経験する「時差ボケ」のようなものです。現地の時間に無理に合わせようとすると辛くなるように、赤ちゃんの時間軸に大人が無理に合わせようとすると、心身が疲弊してしまいます。
発想を転換し、大人が赤ちゃんのペースに合わせてみましょう。
- 赤ちゃんが昼間にぐっすり寝ているなら、ママも一緒に寝る
「この隙に家事を!」と思う気持ちは痛いほど分かりますが、今は家事よりもママの休息が最優先です。洗濯物の山や洗い物は、あなたの睡眠時間を確保するためなら、見て見ぬふりをしても構いません。15分でも30分でも、横になって目を閉じるだけで体力は回復します。 - 夜中に赤ちゃんが覚醒してしまったら、無理に寝かしつけようと焦らない
焦って抱っこで揺らし続けたり、イライラしたりすると、その緊張が赤ちゃんに伝わり、余計に目が冴えてしまうことがあります。部屋は薄暗いまま、静かな環境を保ち、「今は寝る時間だよ」という雰囲気だけは出しつつ、ママは横になったり座ったりして、できるだけ体力を消耗しないように過ごしましょう。
「朝だから」「夜だから」という社会のルールや固定観念を一旦手放し、「眠い時に寝る」「お腹が空いたら食べる」という、赤ちゃんの持つ本能的なリズムに寄り添うことが、この過酷な時期を乗り切るための一番のコツです。
無理に起こさなくていい。自然に整う時期は必ず来る
「でも、今のうちからリズムを作っておかないと、大きくなってから苦労するのでは?」
「甘やかしすぎると、夜寝ない子になってしまうのでは?」
そう心配になるかもしれません。しかし、結論から言えば、その心配は不要です。
前述の通り、赤ちゃんの体内時計は成長とともに自然に発達していきます。誰かに教わらなくても、身体が成長して体力がつき、一度に飲める量が増え、日中の活動量が増えてくれば、自然と夜にまとまって眠るようになります。
その日は必ず来ます。個人差はありますが、多くの赤ちゃんは生後半年から1歳頃までには、夜通しとはいかなくても、ある程度まとまった睡眠が取れるようになります。
だから今は、無理やり朝日に当てて起こして、不機嫌な赤ちゃんを泣かせてしまったり、気持ちよさそうに寝ている子を起こしてお風呂に入れたりして、ママが疲弊する必要はありません。むしろ、そうした無理強いが、赤ちゃんにとってもママにとってもストレスとなり、悪循環を生むことさえあります。
焦らないでください。赤ちゃんの持つ「育つ力」と身体の成長を信じて、今はその日その時のペースに身を委ねてみる勇気を持ちましょう。
Q&A:新生児のリズムに関する「あるある」なお悩み
ここでは、多くのママが抱える新生児の生活リズムに関する具体的な疑問について、Q&A形式でお答えします。
Q. 昼夜逆転してしまって、夜中に目がパッチリで元気いっぱいです。治すべきですか?
A. 無理に治そうとせず、「そういう時期」と割り切って、付き合いすぎないのがコツです。新生児期の昼夜逆転は非常によくあることで、多くの親が通る道です。これを無理に「矯正」しようとすると、ママが寝不足で倒れてしまいます。
対策としては、夜中は部屋を暗く静かにして、「今は活動する時間ではないよ」という環境を徹底することです。赤ちゃんが元気でも、ママは極力相手をせず、横になって目を閉じるなどして身体を休めることに専念してください。授乳やオムツ替えなど、必要最低限のお世話だけを淡々と行いましょう。時期が来れば、体内時計の発達とともに自然と治っていきます。
Q. 沐浴(お風呂)の時間は毎日同じ方がいいですか?
A. 理想はそうですが、ママや家庭の都合で柔軟に変えても全く問題ありません。「入眠儀式」として毎日同じ時間に入れるとリズムが作りやすいと言われますが、それはあくまで理想論であり、必須事項ではありません。
「今日はパパの帰りが遅いから、帰宅を待ってから入れよう」「昼間、機嫌が良くて落ち着いているうちに入れちゃおう」「ママが疲れているから、今日は沐浴はお休みして身体を拭くだけにしよう」など、その日の都合に合わせて柔軟に対応してOKです。新生児期は、時間を守ることよりも、赤ちゃんの体を清潔に保つこと、そして何よりママが無理なくお世話をできることの方がずっと大切です。時間は二の次で構いません。
Q. 日中、明るい部屋で寝かせたほうが昼夜の区別がつきやすいと聞きましたが?
A. 「昼は明るく、夜は暗く」は基本ですが、厳密なルールにする必要はありません。日中の睡眠時に、生活音を完全にシャットアウトしたり、遮光カーテンで部屋を真っ暗にしたりする必要はありません。ある程度の明るさや音があった方が、昼夜の区別を学ぶ助けになると言われています。
ただし、これも赤ちゃんによります。光に敏感で、明るすぎると寝付けなかったり、すぐに起きてしまったりする子もいます。その場合は、赤ちゃんが眩しそうにしていたらカーテンを少し閉めるなど、心地よく眠れる環境を優先してあげてください。教科書通りのルールに縛られず、目の前の我が子の様子に合わせて調整することが大切です。
まとめ|教科書通りじゃなくていい、今のあなたで100点満点
「規則正しい生活」は、子育てにおける一つの理想的な目標です。しかし、それはママと赤ちゃんの体調と心に余裕があって初めて目指せるものです。
産後すぐの、心身ともに極限状態にある今は、「今日一日、赤ちゃんと一緒に、なんとか生きて乗り越えた」それだけで満点です。
カーテンを開けるのが昼過ぎになっても、お風呂の時間が昨日と3時間違っても、赤ちゃんはあなたの愛情を感じて、すくすくと育ちます。
どうか、時計の針を気にすることや、SNSの理想的な育児風景と自分を比べることを、少しだけやめてみてください。そして、目の前の赤ちゃんの穏やかな寝顔や、あなた自身の「休みたい」「眠い」という身体の声に、耳を澄ませてあげてください。
不規則で、混沌としていて、終わりが見えないように感じるこの時期も、振り返ればあっという間です。赤ちゃんのリズムに身を任せる「時計を見ない育児」は、今しかできない特別な体験でもあります。
完璧なママでなくても大丈夫。今日を生き抜いたあなたと赤ちゃんに、大きな花まるをあげましょう。
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